2011年7月30日土曜日

危機の本質



上は最新のエコノミストの表紙。まだ記事は読んでいないが、デモクラシズムの悪い面(議会政治の悪癖)が露呈している今の西欧より、日本の方が安定しているという内容らしい。ならばついに天下のエコノミスト誌も、ノルウエーのテロリストと同じ事を言うようになったという事か。まあこれでドル円の60円台も近づいてきたということだろう。一方NYTIMESは、一面で立ち往生する米国議会と、国家が一丸となって節電に取り組む日本を並べて評している。戦前生まれの町工場の経営者は、WE ARE DOING THIS (節電)FOR JAPANといったことが、NYタイムスの記者には響いたようだ。

これも時代の流れ。日本人の単一性が悪者にされた終戦直後から、西洋が主導した成長主義の限界が露呈すると、市場原理はゆがめられ、民主主義政治は非効率な面ばかりが露呈する。いずれにしても、今の米国に一番欠けているのは愛国心である。国家に助けられたはずの金持ちは税金を払わず、甘やかされた時が長すぎた貧困層は気力を失っている・・。

そういえばナデシコが米国に勝った時、個人的には神はなぜ日本に勝たせのかを考えた。だが今は違う、実力は数段上の米国がなぜ負けたのか。神はそれを米国にメッセージとして示唆したのだろう。成長が止まるという歴史的危機に見舞われた小世界米国。今この国の本当の主役は議員ではない。彼らは代弁者に過ぎず、国民に愛国心が戻らない限りこの国の危機は去らない。

そんな中で米国にも本物がいる事が救いだ。所詮は虚業サークルの中の必要悪でしかない既存の格付け機関にくらべ、発行体から収益を得ない格付け機関のイーガンジョーンズは、代表のショーンイーガンが先ほどCNBCで米国債危機の本質を見事に解説していた。この様な本物がいるかぎり、米国は遠回りとOBショットを繰り替えしながらもいずれはフェアウエイに戻ってくるだろう。

一方の日本。世界の一流メデイアの潮流ではナデシコが勝ったモーメンタムはまだまだ続く様子。だが米国から精神的に独立しない限り、日本人自身がその意味が判らないだろう。為替相場がなぜ円高になるか。その背景はゲーム的な一時的要因と、本質的な長期的要因。日本の指導者や経営者は何をどうマネジするのか。現象に振らされる前に本質を理解すべきだろう・・。

ご連絡。次回で「真マネー原理」単体は終了します。8月より、日々のトピックスに米国の株・債券・商品の相場情報を加えた「真マネー原理プロ」(週4回/月額4000円)がスタートします。尚、このページもトピックスを中心にアップデートする予定です。



2011年7月29日金曜日

米国産スイカ(レター)

NHKのニュースで日本に米国産のスイカが大量に入ってくると言っていた。在米18年の自分が断言する。スイカは日米の食材を比べ、旨みに大きな差がない希少な食品。こちらでは一玉250円(大玉)程度。日本でいくらで売るのか。値段にもよるが、米国産スイカはお勧めである・・。



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From: otakizawa@dttrading.com
Subject: TAKIZAWAレター(重要)
Date: Thu, 28 Jul 2011 06:56:47 -0700

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ざっくりいって、今日は一連のDEBT CEILINGの話のエンディングがみえてきた。その説明の前にそもそもこの話は何だったをもう一度確認する。

元々この国ではこのイベントは予定されていた事。本来なら2~3月からこの話題が台頭するべきところだった。ところが2月と3月は米国も中東情勢と日本の大震災に支配され、カブキダンスの幕開けはずれ込んだ。そして8月が近づくにつれ、やや緊迫感が増幅された。それでも誰も本気で米国債がデフォルトするとは考えていない。よって株の下げはこの程度である。(債券は全く下がっていない)だが昨日なり、財務省の緊急時の優先順位が明らかになってくるとようやく株は織り込み始めた。ソレが昨日50日線が意味をなさなかった理由だろう。これは下院には転換点である。そして、今まではカブキダンスに興味が無かった失業者や年金生活者もこれからはそうはいかない。彼らの生活の糧となる小切手届かなくなる可能性が出てきたのだ。彼らは必ず騒ぎだす。言い換えると共和党の下院は彼らが騒ぎださないと妥協する大義が生まれない。ソレが起こるタイミングで株は勢いよく下がり、緊迫はピークとなろう。だがそれはエンディング近づいている証拠。

ベイナー案は下院を通過しても上院はそのままでは通らず、またリード案も上院のTEA PARTYの親分デミントのフィルバスターは必定。だがその裏でTWITTERでは妥協のシナリオも漏れ始めている。妥協しなければマクニールの提案に沿ってオバマが単独で引き上げるだけだが、その場合はどこまで国民に痛みを感じさせるか。ソレが株に直結し、次の相場感になる・・。







2011年7月28日木曜日

Raise The Debt Ceiling Rap

http://www.youtube.com/watch?v=EoS52fVtVQM

このユーチューブ。英語が判る人も、判らない人も、この国を感じてもらえるだろう。


2011年7月27日水曜日

テロリストの理想国家(レター全文)





http://in.reuters.com/article/2011/07/26/idINIndia-58454720110726

週末、ジョージクルーニーの「THE AMERICAN」を観た。ネットで調べると邦題は「ラストターゲット」。ちょうど今公開中らしい。映画としてはまあまあ、三ツ星は妥当だ。主人公の役柄は、人としての弱さが出てきてしまったゴルゴ13を想像すればよい。こんな役にクルーニーはよく合う。そしてこのタイトルには、舞台と登場人物が全て欧州(イタリア)の中で、「アメリカ人とは何か」を浮きだたせる意図があった。重要な役柄の神父が言う。「君はアメリカ人か、歴史の浅いアメリカは歴史から逃れる事が出来る(ESCAPE FROM HISTORY) だが我々は歴史から逃れる事は出来ない・・。」

さて、冒頭に添付したロイターのサイトは、ノルウエーのテロリストが、調書の中で「理想国家はJAPAN」と述べた記事。人口500万のノルウエーの殺人件数はこれまでは年間20件前後。小国とはいえ国民性が穏やかでないとあり得ない数字である。その意味でも彼が日本を理想とした動機は判らないでもない。だが単一民族がモノカルチャーを維持する事で生まれる平和は外からの衝撃に弱い。ならば外が平和でなくなった時、日本はどうするのか。平和的に全滅するより、本来は今のうちからに建設的議論が起こるべきだろう。だが戦争が終わってから、米国をベンチマークにする以外の想像力を失った今の日本からは危機意識は感じられない。そしてナデシコ然り、その時の人気を追うだけのメデイアの幅のなさも悲惨である。 

おそらく、米国というベンチマークが無くなる事でしか日本はソノ必要性に気付かない宿命にある。ソレは米国債を扱うこの仕事から悟った。また戦後世代がモノを決める立場から去るまで、その宿命を変える事は出来ないだろう。ただ、外国との駆け引きでせっかくの歴史を戦略的に使いこなせないのは残念。そんな中、冒頭の記事は今の日本の異様性をより際立たせている・・。


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From: marukano@hotmail.co.jp
Subject: FW: TAKIZAWAレター 3
Date: Tue, 26 Jul 2011 12:30:37 -0700


株は上がる理由が無い中で、先に戻りをやってしまったリズム。この場合は安値圏でノ引けが予想される。尚入札は予想通りDIRECT BIDDERが暗躍。





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From: otakizawa@dttrading.com
Subject: FW: TAKIZAWAレター 2(重要)<S&P社の格付け>
Date: Tue, 26 Jul 2011 08:11:39 -0700


株は20日移動平均で下げ止まっている。この下は50日。50日までは遠いうが、20日割れの下髭?試すとしたら欧州時間の終わり前後か。そして米国時間の午後は、今日に関は株に有利な材料が(米)国内に多い。特に漏れ伝わるS&P社のスタンス「ベイナー案(下院)とリード案(上院)を比べ、リード案ならトリプルAが維持されるかも・・、これはPIMCOのエルアリアンなどにS&Pのチャンバース氏が語ったとされる」が本当なら午後は株は買われる可能性が高い。

ところで、一体どれだけの市場関係者が今の米国政治の様をカブキダンスだと理解しているのか。そもそも米国議会の仕組みもしらずにこの劇を観ても意味はない。そんな事で振り回されるならトランスフォーマーの方がお勧めだ。オバマはリード案支持を表明した。だが事実上リード案が上院を出る可能性はゼロ。なぜなら上院ではフィルバスターがあるため60人の賛成が必要。だが民主党はその60人を固められない。そして中身を観ても、債務削減と引き上げ幅を段階的にする共和党下院案の方が現実的。一方のリード案は削減幅も2.7Tと大きいが、CEILINGの引き上げ幅も2.4Tと大きい。これは2012年以降を見据えて一気に憂いを無くすのが狙い。しかし全く現実的ではない。イラク アフガンからの撤退を前提にした1兆ドルう削減は党則に合致するが、民主党の骨子であるベネフィットの削減は下院の民主党が賛成しないだろう(ナンシーを観れば判る)。おまけに譲ってはいけない金持ちへの増税は段階的にお茶を濁した内容・・

いずれにしてもドラマの終わり方は、議会からは予定時間内に法案は成立せず、上院のマクニールが示唆したオバマの大統領決済という歴史的に異例の処理に向かうはず。その間に利払い優先で政府機能は停止し世論の反応を試す事になる。その際は株は200日を割れる展開を予想。そしてオバマはリード案を前提に、恐らく憲法14条修正条項を使ってDEBTCEILINGを引き上げる・・。

このシナリオが見える中、リード案の米国債にトリプルAを維持するなら、S&P社はやはりトリプルCの会社だった事になる・・。

sys draw buying amid weak data, -1% June new home sales,
and -1 July Richmond Fed mfrg index vs. 3 June, but also slightly higher
59.5 July Conf Bd Consumer Confidence, as some noted market focus --
amid Capitol HIll for this moment on debt/deficit talks -- now turns to
fundamentals and speculation that economy will remain weak. Earlier also
there had been speculation about foreign buying in Tsys this morning

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From: otakizawa@dttrading.com
Subject: TAKIZAWAレター <想定外の惨劇>
Date: Tue, 26 Jul 2011 05:31:10 -0700


http://twitter.com/#!/ErinBurnettCNN/statuses/95653304423546881


ノルウエーには東北大震災に匹敵する想定外の事態。警察官が拳銃を携帯しない国は欧州に3か国ある。知らなかったがまず英国。それに同国とアイスランドだ。常にテロ想定している英国は別として、今回ノルウエーではニュースクルーが武器を持った警官隊よりも先に現場に到着した。ヘリが飛ばず、一時間あまりかかって警察の特殊部隊が来る間、彼らは惨劇を観ているしかなかったという・・。

ところで、冒頭はCNBCのヒロインからこの夏に鳴り物入りでCNNに移ったエリンバーネットのTWITTER。彼女はここでCNBC時代からの知り合い(ニュースソース)がS&P社と繋がっており、S&Pは共和党案ではAAA維持は難しいと言っていると漏らしている。彼女がこれをCNBCで言ったら大変だ。いずれにしても、S&P社はあちこちからプレッシャーをうける。

2011年7月26日火曜日

シートベルト、カブキダンス (レター抜粋)

http://www.foxbusiness.com/markets/2011/07/25/obama-to-banks-were-not-defaulting/?test=MM


そういえばCNBC関係者が英語で「KABUKIダンス」と表現をするのを何回か聞いた。文脈からは、物珍しくビジュアリーなインパクトも十分あるが、彼らには何をやっているのかわからない現象を指していた。歴史の浅い米国人に日本の伝統芸能をバカにされた気分で不愉快だが、実はDEBTCEILINGをめぐる議会のドタバタも「KBUKIダンス」と言い切る人がいた。ならばそのダンスもそろそろ終わり。なぜなら添付したFOXニュースでチャーリーゲスパリーノの言うように、もう「デフォルト云々」は相場の材料ではなくなった。代わってこれからテーマになるのは格下げの可能性についてである。


そもそも共和党案も民主党案もDEBT CEILINGで歩み寄りをしたため本質の米国債の健全性の回復は後回しになってしまった。ならば議会が妥協しても、あるいはオバマがDEBTCEILINGの引き上げを大統領権限で断行しても、どちらでのケースでも健全性の回復が先送りされた米国債について、「内容を伴わないデフォルト回避は意味が無い」+と警告したS&P社はどうするのか。今更この原則をひっこめたらかっこ悪い。またイタリアやギリシャを容赦なく格下げをしながら米国債を甘くしたら、格下げのコストを払った欧州からはすれば許されない行為にみえるだろう。つまり、ムーデイーズにせよ、S&Pにせよ、格付け機関は存亡の危機を迎える中で、この米国債をどう扱うか。これがこれからのテーマ・・。


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From: otakizawa@dttrading.com
Subject: TAKIZAWAレター <シートベルト>
Date: Mon, 25 Jul 2011 07:07:42 -0700

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本日CBOTは米国債先物の証拠金を引き上げた。これは驚き。ご記憶の通り、銀やガソリンの先物はこの政権の意向?を受けて同じ事が起こった。だがなぜ米国債?。T-BONDが全盛の90年代に記憶があるが、今回も政権の意向を感じる。恐らく政権はこれから起こる事で金利が急上昇する事を懸念している。ならばそれは売りか買いか。これまでは米国の意向に逆らう人はいなかった。だが、衰退した英国(ポンド)がソロスに挑まれてから20年。そろそろ米国の絶対性が揺らぐ時期が来ているのかもしれない。いずれにしても、ブラックスワンさえも軽んじるヘッジファンド時代は予想不能。とにかくこれはシートベルトを締めろ・・というシグナルである・・。







2011年7月22日金曜日

相場のヒント 



(引用 Sean Corrigan of Diapason)

上は有名オークションイ会社のサザビーズのチャート。2流以下の情報が氾濫する中で、大局が見えにくい日本の個人投資家には参考になるだろう・・

2011年7月20日水曜日

狂乱の20年代の再現と新土地神話




ニューヨークタイムスによれば、前回の選挙で上院議員を引退したクリスドット氏は最近グチをこぼしているらしい。愚痴とは自分の名前の付いた法案のドットフランク法について。彼は出来れば法案から名前を外してほしいと相棒だったバーニーフランク議員に漏らしているとのこと。クリスドット氏はこんな法案に自分の名前がついていると、孫が可哀そうだと考えているらしい・・。

つまり、金融危機の再来を防ぐため、昨年オバマ政権が死力を尽くして成立させたドットフランク法案(金融改革法案)は、今は見るも無残な哀れな状態(骨抜き)になっているというのである。そんな中、本日ラスベガスの著名な企業家のスチィーブウィン氏がオバマ政権を「反ビジネス」と激しく批判した。クリスドット法然り、スティーブウィン氏やドナルドトランプ氏に加え、金融によって雇われた共和党系のロビーイストは米国から全ての規制を取り外そうとしているようだ。

この状況を冷静に観ると、リーマンショックを大恐慌とダブらせたのは間違っていたのではないかとの思いが走る。もしダブらせるなら1910年前後。実はこの頃にもNYの銀行の倒産をきっかけに米国には金融危機が走った。この倒産は陰謀説が好きな人はJPモルガンが仕組んだと主張する。当時の米国はまだ建国当時の反金融の風潮が残り、そこでJPモルガンは風説を流布して金融危機を起し、米国に巨大金融資本が必要である事を知らしめる必要があったというのである。

真実はともかく、この危機をきっかけに金融の大資本化(TOO BIG TO FAIL)が促進されたのは事実だ。なによりもFEDが誕生した。そしてウイルソンの時代が終わるとハーデイング クーリッジ フーバーの共和党の大統領が連続して登場。これが20年代だ。この時代は世界大戦後の復興外需と国内の規制緩和で米国の景気はすこぶる良かった。だが一方で米国はデタラメになりすぎた・・。

近々HBOでシリーズ第二段が始まるBOARDWALK- EMPIREは、この時代にアトランティックシテイーを東海岸を代表する歓楽街へ変貌させた実在の州の財務官(トレジャラー)が主役。彼は禁酒法ができた事で逆にモラルが崩壊していく時代を象徴する人物だ。彼はハーデイングの選挙参謀を務めるかたわら、上級地方公務員の特権で酒の横流しで儲け、更に公金でホテルに住む。そこに愛人を囲い、都合の悪い人間はカポネなどのギャングを使い殺す。だがニュージャージーは潤った・・。(冒頭の写真は有名なラッキー ルチアーノやホワイトソックスに八百長をさせたアーノルドロスタインなどとテーブルを囲む主人公)

事実としては彼は告発され刑務所で人生を終えるが、今オバマを批判し、大統領選挙に出る出ないと騒いだトランプ氏や、今日のスティーブウィン氏の口上を読むと、この主人公が前シリーズで言ったセリフを思い出す。もしかしたら、ドットフランク法も近代の禁酒法になってしまうかもしれない。これで次の大統領が共和党から出ようなら、バーナンケ議長は大恐慌を心配する前にモラルを失った20年代の再現を意識する必要があるだろう。

ところで、今日はヘッジファンドが米国内の農地を買い漁っている状況も報告された。2010年からの1年で中西部の農地の値段はなんと15%の値上がりだという。同じ期間に住宅価格は下がった。街の住宅価格が下落し、一方で広大な農地が15%も値上がりする状況とはなんだ。かつて狭い街場の平地を巡り土地神話を経験した日本人は想像できるだろうか。これがバーナンケFEDによる一時的バブルならいずれ農地の価格は下がる。だがそうでない場合、日本のバブル崩壊よりももっと恐ろしい事が待っている可能性を秘める・・。



http://www.hbo.com/boardwalk-empire/inside/extras/download/wallpapers.html#/boardwalk-empire



2011年7月19日火曜日

12人目のディフェンダー















共和党を代表するテレビタレントにグレンべックという男がいる。彼は昨年世界が南アのワールドカップに熱狂する様をみて、” みろ、だから俺はサッカーが嫌いなんだ”と平然と言い放った・・。

良くも悪くもこれが今の共和党かもしれない。小世界の米国が大世界の地球を眼下に置かないと気が済まない。だから世界と協調し、新しい米国の姿を模索するオバマ政権は軟弱で許せないのだ。だが今の米国ではこの様な狂人集団はマイノリティーである。特に若者は今の米国に絶対性など感じていない。だからこそ国民が団結する必要もそれなりに判っている。その象徴が米国の女子サッカー代表チームだ。チームの愛称は”ヤンクス”と“スターズアンドストライプス”。言うまでもなくヤンクスの愛称はヤンキースが有名だが こんな愛称がつく背景にはこの代表チームは米国には珍しい「国家的」な存在であり、時に国威高揚の意味が含まれているからである。そして今回のチームの実力は91年と99年にワールドカップを制したチームより上だとされた。ならば圧倒的迫力のワンバック選手に加え、美貌と実力にアバンギャルドが加わったのキーパーソロ選手をナイキがほっておくはずがない。ワールドカップ期間はかっこいいCMが連日流され、このチームが優勝する瞬間に向かってシナリオは造られていった・・。

そして昨日、米国人の友人一家を招いて観賞したゲームのESPNの解説は秀逸だった。始まって20分、米国はゴールポストという12人目のディフェンダーの存在に気づく。ただ震災を背負うナデシコの見えない力には米国は準備していたはずだった。

最早ゲームの解説はしない。ただ米国の立場で言うと、前半で12人目のディフェンダーに気づいたらなぜ得点後に油断したのか。米国はPKを想定しない致命的ミスを犯した。具体的には、金髪をなびかせ前線に有効なボール出し続けたラピノエ選手をワンバック選手が2点目を決めた直後に後退させたこと。彼女の交代で入った選手がPKの3人目として決定決な失敗をした。このコーチの采配はPK戦で頼りなるベテランのチェイニー選手が前半で負傷退場したいた状況からすれば、米国にしては珍しい「想定外の判断ミス」だった・・。

それでも個人的には米国のサッカーチームにナデシコに劣らない好印象をもっている。なぜなら米国のサッカー代表は金まみれの他の米国スポーツにはない真摯さがある。特に人気も実力もある女子代表は、ソレにおごらず、コーチを他国から招き(米国のコーチはスウェーデンの名選手)練習量は世界一とされた。そしてその米国が大舞台で敗れた相手は日本のナデシコだった。

ただいくらナデシコに技と精神力があるとはいえ、普通ならありえない結末。ゲーム後、ESPNの解説者と同じ記憶がよみがえった。それは呆然とする米国選手の顔が、一体に何に負けたのか判らない表情だった80年冬季五輪のソ連のアイスホッケーのナショナルチームの選手と同じだった事だ。解説者はこの日本の勝利はあの時のアメリカに匹敵すると言った。

そもそもミラクルオンアイスと称されるその勝利は、米国近代史において単なるスポーツを超越した出来事としてジャーナリズムの観点からも注目される転換点だ。当時のアメリカは戦後において最悪期。発端はオイルショックとされるが、本質は戦後の繁栄のモーメンタムが失われた事だろう。クライスラーは倒産、街は失業者にあふれ人々はガソリンを求め長い列をつくった。

そして軍事力もソ連に勢いがあり、イラン革命で米国は国力の低下を露呈した。そんな時、米国の若い学生チームが最強と言われたソ連代表に勝った。事前にソ連のアフガン侵攻に抗議して米国はモスクワ五輪のボイコットを表明、ソ連は対抗処置で米国本土での冬季五輪を辞退すると思われた。しかし勢いに乗るブレジネフは、ソ連の強さを世界に示すために敢えて選手団を送り込んだ。その中心が職業軍人で占められたアイスホッケーの代表チーム。米国は直前の遠征でソ連のBチームに敗北、サイボーグの強さのソ連代表は事前試合でNHLプロ選抜を蹴散らした。

30年前、日本でNHKの衛星生放送で観たその試合の興奮は今でも鮮明に覚えている。ゲームは予想通り圧倒的にソ連が優位に進める中、途中から「神の意思」が漂った。そして米国が勝利した瞬間、普段はミラクルの言葉をあまり使わない米国が歓喜した。そしてこのどん底から米国はレーガン時代を経て頂点を極めたのは御承知の通り。一方でソ連は衰退へと向かった。

最後に、ゲーム後からずっと考えている。神はなぜ日本を勝たせのか。もし答えがなぜ大津波が日本を襲ったのかの延長なら、日本はミラクルオンアイス後の米国の軌跡を学ぶべきだろう。一方の米国も自分達がなぜ負けのかを自問自答すべきかもしれない。まあ今日の周りの米国人の雰囲気はグレンべックと大差ない。彼らには 野球 アメフト バスケットボールの米国発祥のスポーツがある。その世界のマネーは金融市場を媒介に今のところ衰える雰囲気はない。だが米国人の大半が大世界の価値観に興味がないというなら、その時はソ連と大差ない運命が待っているのはないだろうか・・。















































2011年7月15日金曜日

70年ぶりの真剣勝負


「とりわけ、太平洋艦隊司令長官だったチェスター・ニミッツは、い号作戦での前線視察の予定を暗号解読で知ったとき「山本長官は、日本で最優秀の司令官である。どの海軍提督より頭一つ抜きん出ており、山本より優れた司令官が登場する恐れは無い」と判断し、殺害計画を実行させたほどである・・。」


 (WIKIPEDIA、山本五十六から)


今日のNYタイムスのスポーツ欄の特集は日曜日の日米血戦。そこにナデシコ賞賛の声は最早ない。そんな時期はとっくに過ぎ、米国は国力を挙げて日本を倒しに来た。これまでの人生で様々なスポーツを観てきたが、米国が国を挙げてチームスポーツで日本を相手にここまで本気になった記憶はない。オリンピック競技のバスケットは日本は対象にならず、バレーボールの人気は万年低位だ。そして日本が米国を倒したと思っているベースボールは、米国は国力を挙げて本気になった事はない。

NYタイムスは米国選手の声を伝えた。総合すると、まず彼らは必ずサワを潰しに来る事がうかがえる。米国は負けるとは思っていないが、日本がかなりの強敵である事は悟った。誰も過去の戦績などは意識していない。こんな時の米国は日本人が考える「正義の超大国」米国ではない。つまり横綱相撲などしないということだ。

太平洋戦争では日本に負けるとは終始考えていなかった。ルーズベルトにとってもし日本が攻めてくれば儲けものだったのは事実。だが実際の戦闘が始まると現場は日本を侮っていた事を知る。そして取った行動は躊躇なく山本五十六を狙い撃つ事だった・・。

太平洋戦争での米軍関係者の死者は10万。一方ヨーロッパ戦線では30万人。地上戦では双方の名もない兵士が血を流し、またときに一般市民を巻き込むことをいとわなかった米国も、特定の上級軍人をターゲットにした作戦は山本五十六以外にほとんどやっていない。つまり勝利までの過程を逆算する時、絶対に倒すべきは手段をいとわず倒す。この残酷さをもった米国と対峙する日本はその本当の真価が問われる。

真珠湾から70年ぶりの日米の真剣勝負になるこの試合、日本はその準備があるだろうか。報道では勝った方の国旗の色で月曜日のエンパイアーステートビルは飾られるという・・。





米国に矜持があった時代




(添付チャートはDoubleLineのJeff Gundlach作成の引用)

CNBCに登場するマネーの亡者は金融市場が苦しくなればバーナンケは助けるしかないと異口同音に言う(QE3)。ソレが彼らの相場感の前提であり、今彼らの多くは米国債の発行枠引き上げ問題でオバマと対峙する共和党が増税を阻止する事を応援している。だが普通に考えれば正しいのはオバマだ。なぜならオバマ政権は彼らが引き起こした金融危機で、本来は彼らが背負うはずの負債を国が肩代わりした。結果米国債が大量発行された。しかしこんな事は続けられない。だから国家財政を元に戻すためにもオバマは今度は彼らの様な金持ちから税金をとるしかない。ところが共和党下院は増税は受け入れらないの一点張り。その根底をなすのがレーガン以後の減税信仰である。そしてその矛盾に便乗しているのがバフェットのレベルになれない金の亡者達。

多くの人は知らないが、そもそも米国は過去の様々な困難を国家の協調で克服してきた。実は国が苦境にある時、金持ちが払った税金は多大である。それが上のグラフ。そしてその下には米国の債務残高のチャートを入れた。実はダウのチャートもこの債務残高と同じカーブである。これをみると米国は20年代に世界の頂点にたったにもかかわらず、その株価も債務残高も50年以上低位で推移した。それが84年から爆発的に急上昇したわけだが、ここに今の米国がレーガンを崇める理由がある。レーガンは彼こそが一定の枠内に収まっていた米国債残高を野放図にした張本人だが、株と共に米国人の生活は豊かになった。そしてその間に米国債の消化が問題にならなかったのはクリントン時代の世界経済の成長と日本のデフレによる資金還流が貢献したからだ。こうみると、レーガン以降の米国は借金で株のインデックスを買ったともいえる。ならば債務と株のチャートが同じカーブ野は当然。ただそれを支えた成長に陰りが出るとブッシュは限度を超えた規制緩和と流動性に頼ってしまった。ならば崩壊は必定。では今その崩壊から立ち直れないからと言ってまたここでレーガンを持ち出していいのか。

レーガンが成功したのは、その前に長い矜持の時代があったからである。しかし今その前提はない。存在するのはレーガン時代に甘やかされたベービーブーマー。そして彼らをの票が全てである今の政治家に対し、オバマは今考えるべきは次のELECTION(選挙)ではなく、次のGENERATION(世代)だと言ったという。そしてそのためには再選されなくてもよいといった話が伝わっている。やや美談すぎるか。この話が本当なら本来のオバマを取り戻したオバマにもう一度期待してみたい・・。


<読者へのご連絡> 

ブログの有料化の準備が整いました。8月より、新サイト<真マネー原理 プロ>をレジマグサイトでスタートします。


2011年7月14日木曜日

国の宝

ESPNの解説は、彼女のことを National Treasure (国の宝)と呼んだ。少し大げさ。正直最初はそう思った。ただその彼女のミスで先取点を取られても、ナデシコは落ち着いていた。直ぐに同点。そのまま迎えたハーフタイム、前回の米国ナショナルチームのキャプテンで今回ESPNで解説を担当した女性は〝米国の決勝の相手はJAPAN”と断言した。(これはこれで見事)そして〝誰もバルセロナのレベルになれない。でも今世界でバルセロナに一番近いのはナデシコJAPAN”と言った・・。確にナデシコはWBCを連覇の野球や上野が活躍したソフトボールとも違う。何が違うのか考えると、結論はキャプテンシーに行きついた。恐らく解説の彼女は、キャプテンとして米国を率いた経験から、体力で劣りながら次々に西欧のアマゾネス軍団を倒すナデシコのキャプテンSAWAを尊敬しているのだろう。そして彼女の価値は実は日本人の自分が一番気づかないのかもしれないと思った・・。

そもそも日本は世界に通じるキャプテンシーを自分で発した経験に乏しい。元々そういうカルチャーではなく、産業界をみても社長が一番目立つ米国とは価値観が異なる。そして良くも悪くもキャプテンシーの欠如の象徴が内閣総理大臣だった。こちらではいまだに中曽根とコイズミしか認知されないが、一方で何があってもレジティマシークライシス(国家統治の正当性)が揺らがないのは日本ぐらいだ。では日本にとってNATIONAL TREASUREとはなんだろう。国策は此処を守る事から始まるはず。一体どれだけの人が日本の宝が何であるかを意識しているのだろう・・。



2011年7月13日水曜日

スプレッドの魅力と罠(顧客レター)



そういえば昨日は午後に金先物が急落する場面があった。株/債券がリスクオフモードの時、それまで独歩高だったゴールドが突然急落するパターンは過去にもあった。多くの場合その前後で株の売りと債券の買いはパニック感が漂った。そしてこの様なケースの多くは、ヘッジファンドが何かの取引で損が拡大し、追加の担保を迫られたのケースだとされた。確かに、この5年間でもゴールドはもっとも安定的にロングポジションを維持できた商品。つまりヘッジファンドは為替や株で損を出すと、ゴールドを売り担保に換える仕組みが出来あがっていたのである。

ならば昨日の午後からのこの24時間の株と債券の派手な動きはソレを前提すべきか。そして今商品系のヘッジファンドで一番危険で一番魅力的なスプレッドと言われるのモノがある。まるで毒を持ったバラのような話だが、そのスプレッドとはブレントとWTIらしい。(北海とテキサスの原油先物)

例えば金と銀の相関は長いモノで1000年のチャートがある。そして今の金/銀の代表的な相場感はレンジ内を想定している。つまりフィボナチ。それに比べオイルのスプレッドは歴史が浅い。永らくWTIがブレントを1ドル程度上回る決めごとで推移してきたが、元々そこに金融商品のスプレッドにある確固たる理論はない(せいぜい純度)。

ではいつの間にか米国がロシア サウジに肉薄する3位の産油国になり、本来自然保護の民主党のオバマ政権が産油大国化宣言をする中でこのスプレッドは売りか買いか。この姿勢を前提にすればスプレッドは拡大する予感。だが先に欧州が衰弱すればその限りではない。いずれにしても未知のチャートの魅力はここ。そして今、このスプレッドの甘い罠にはまったヘッジファンドの出血が激しいらしい。(WTI買い/ブレント売りの損失拡大)

さて、連日のとりとめのない値動きの中で隠れている要因がある。それは前述の様に様々なスプレッドの前提への揺さぶりだ。例えば欧州では昨日から格付け機関の格付けを敢えて無視する行政指導の話が出ている。また先物市場では、本来金融商品までを扱うはずの金融機関が、今は先物の対象となるモノを仕込んでいる噂が聞こえてくる。

もともと先物やデリバテイブ等は所詮は約束ごとである。一方でこの国では約束を守れず、それを誰かに転嫁するのはスキルとなった。そしてその最後の受け皿だった米国債までがついにソブリンリスクの対象になる時代が始まった。ならば金融機関がその先にまで手を出しても不思議はない。

つまり、欧米の一部の金融は表向き市場の混乱を理由にFEDにQEを続けさる一方、実はその金でモノを抑えにかかっている可能性がある。やはり彼らの方が先が見えているのだ。ただマネーをとり扱う金融にここまで許したら世界は終わりに近い。しかし今の米国は金融と実体経済のバランスがおかしくなってしまった以上、最早コレは陰謀というよりは宿命として我々は準備すべきだろう。

そしてその本質に対して現象でしかない今の金融市場のボラティリティの中でバタバタするのはゲームとしては面白い。だが、一時そこで勝ったからと言って生き残りが保証されるものではない。まあ何らかの約束を前提にした金融市場のこれまでの前提に限界が訪れた時に人は何を求めるか。次のフェーズは相場の転換点ではなく恐らくは歴史の転換点のプロローグだろう・・。

Subject: TAKIZAWAレター
Date: Tue, 12 Jul 2011 06:08:18 -0700






突発的な出来事なしにNYが開く前に債券先物(TY)が80万枚の出来高。殆どはペイントレードだろう。そして敢えて冷静にみると、ギリシャにせよ、イタリアにせよ、スペインにせよ、なんにせよ、そのヘッジで今の不健全で不透明な米国債をここまで買い上がらなければならないのは別の意味で末期症状だろう。相対的ではなく、米国の力を冷静に見てきた立場として、このルールの根本である米国のアンカー理論を先を急がなければならないと感じている・・。

この本質とは別に、昨日紹介した1294レベルのサポートを試した株(SPU)は、この後突発ニュースが無ければかなり戻る。そして次に下がるかどうかはJPの決算を観てから・・。つまり今日の米国債はデイトレードでは絶好の売り場・・。

一方で大水害と大干ばつの米国のコントラストは今の米国の二極化の象徴。米国議会の舞台は、米国という国家の体裁よりも自分の主張をぶつけ合う事が優先される場。ソレに政権が対峙するわけだが、どっちに見方しても再選が苦しいオバマ政権はインディペンデントを意識している。米国のインディペンデントは、自分ではなく国の行く末を心配する唯一の層。オバマはこの人々の信頼を取り戻さなければならない。つまりはオバマもこの声を代弁するならば、安易な妥協はないという事である・・。



2011年7月12日火曜日

熱い女性たち(顧客レター)

今日は欧州時間と米国時間は別のテーマが主役。欧州のテーマは株安/債券高がはっきりしているが、米国のテーマ(DEBTCEILING)は値動きのコンセンサスが見えない。ただ決算シーズンがキックオフになった。よって株は場中にどれだけ売られていても、大引けは必ずカバーが入る事を意識する必要あり。

さて、この後はオバマのスピーチより実はもタイガーウッズのアナウンスの方が興味がある。タイガーは何を言うのか。まさか引退?。そんな中、昨日の米国とブラジルの女子サッカーは久しぶりに米国の良さがスポーツにでた試合だった。(タイガーの記者会見は中止)

米国の良さがスポーツでた最大のケースは何と言ってもミラクルオンアイスのアイスホッケーだったが(レークプラシッドでソ連に勝った奇跡)その後スタインブレナーが現れ、米国のプロスポーツ界にフリーエージェント制のハイパーインフレを起こした。

そして米国人はオリンピックで集団競技にそれほど注目しなくなり、(米国が熱くなる金メダルの大半は個人競技、)一方で国内のプロスポーツはドラッグが当然になっていった。その光景に慣れてしまったためか、昨日の米国対ブラジルの女子サッカーに米国が熱くなったのは新鮮だった・・。






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Subject:
Date: Mon, 11 Jul 2011 05:09:34 -0700


日曜のDEBTCEILINGの協議で共和党が2Tと言うオバマ政権の主張の半分の数字を持ち出した事で、一部は妥協が近いと錯覚した様子。ただそれは間違い。共和党は増税を議題にするつもりはまったくなく、バランスシート改善により積極的な姿勢を示したオバマ政権も、全ての前提が増税になっている事から全く歩み寄りはない。そして今日の11時(NY時間)オバマが何度もUPDATEを強いられるのはデフォルトした際のイメージ戦略と考えた方がよい。一体どちらが誰が無理を言っているのか。既に事が起こった後のイメージ戦略に主眼は移っている・・。





2011年7月9日土曜日

トランスフォーマー







どのチャートをみてもこの国がもう昔の米国でない事は明らか。にもかかわらず、それを認めないのはこの国自身だ。そろそろレーガン主義の限界に気付いてほしいが、今のところ企業は儲けても国内の人員を雇う気配はなく、一方世界大戦の時代でもない今、共和党の「規制緩和が雇用を増やす」とのスローガンは強欲な経営者に利用されているだけ。要するに、成長が止まった小世界ほど国家としては醜いモノはなく、そこには愛国心のかけらもみえない。

そんな中、バフェットが、もしDEBT CEILINGの話が進展しない場合どうなるかとの質問に、その時はバークシャー等、自分の会社の関係者には税金の前払いを強要するかも・・(財政を助けるために)と、彼流のメッセージを流した。まあ半分冗談なのは、バフェットはそんなことに賛同する人は限られていることを知っているからだろう。

ではこの国に残された道は何。漠然と成長の構造ををトランスフォームするしかない事は判る。ソレが添付したチャートの本質。今の金融ゲームはそのつなぎとして、その期間が長くなればなるほど危険である事を賢者は感じている。まあ個人的には財・サービスと消費で(GDPを)考えたマクロの常識を超える新しい公式の出現を待つしかないが、今の気分転換にはトランスフォーマーの最新作を3Dで観るのは良い。とくにシカゴを知らない人は必見。後半はシカゴの綺麗な街並みが満載となる。そしてそのビルが全て壊されていく。このCBOTのビルも登場し周辺も殆ど破壊された。

CGとはいえそのイメージが残る中で今日快晴のシカゴの美しさは違和感。そしてちょうど昨年今頃、3連休を利用してダウンタウンシャットダウンして撮影されたとされる鳥人のシーンは圧巻。ウイングスーツを着た特殊部隊が高層ビルの間を降り立つ。あれを本当に人間がやった処がカビ臭いフランス映画にはない米国の凄いところであるのは事実だろう。

ただ作品の評価は酷い。星は一つ半だ。観れば低い評価の理由は明らか。それは、3部作の終結として期待した人には、ストーリーが過去の2作との関連ではメチャクチャになってしまったからだろう。なぜなら主役のヒロインを演じるはずだった女優が監督を批判したために、一度シナリオが完成した後で突然降板させなければならないアクシデントがあった。(監督のマイケルベイは女優を擁護したが、激怒した製作者のスピルバーグのエグゼキィブオーダーだったという)

ただそのメチャクチャなストーリーの中でも不思議な点が一つ。それは今日こちらで話題だったシャトル引退による米国の宇宙での競争力衰退が実はこの最終作でも重要な筋になっていた事。まあ元々ストーリーでうならせる映画ではない事を承知すれば十分映画館に行く価値はあり・・

(CBSの鳥人の紹介)
http://www.cbsnews.com/stories/2011/06/28/earlyshow/leisure/main20075001.shtml

2011年7月8日金曜日

世論操作

今日のNYTの一面はメキシコから移民が来なくなった現象。今年命がけでメキシコから米国を目指す人の数は1950年代以来の低水準になっていると言う。記事では国内にとどまり始めた若者の話があった。彼らはメキシコの魅力が急増したというより、渡米に命をかける価値が無くなったと感じている。麻薬組織から逃れ、灼熱のアリゾナの砂漠を何とか乗り切ったとしても、そこが「別のメキシコ」だったら意味が無いということである。

以前キューバから移民が来なくなった話をした。メキシコかもら不法移民が来なくなったことは、彼らにとってのドリームだった米国の中流階級が消えつつある証明だろう。一方で不法ではなく合法的に移民するのが旧東欧諸国だ。この国ではかつてのアメリカンドリームが消える一方、社会主義化する矛盾を逆手にとるのは彼らにとっては容易いのかもしれない。

さて、今日は217000人というキーナンバーを挙げておく。この数字は2012年11月までに失業率を8%未満にするためにこれから毎月増加しなければならない「ノンファーム(非農業雇用指数)」の平均値である。(8%台以上の失業率で過去再選された大統領はいない)

ではこの数字がただの目標なのか、或いは絶対条件としてその達成のためにこの国の政治は手段を選ばないのか。今後の相場にも関係するこの見通しは日本人には難しい課題だ。

それを感じる上で、米国には日本では普通に用いられる「優秀な人」と言う褒め方がない事を触れておく。この国は「出来る人」と「そうでない人」で区別される。つまり学業優秀で真面目に努力する人だが、結果が残せなければ優秀とは言わない。

そんな出来る人が集まって戦略を練るのが政権。そこでは法律は守るモノではなく破らないモノ。そして何よりも彼らは民主主義がいかに非効率かを知っており、その彼ら束ねるオバマは彼らの使い方を知っている。

そして今政権はFACEBOOK等のソーシャルメデイアを通して世論を作り出すことに必死。なぜなら世論を作り出せなければ民主主義下の政治は何も出来ない。結果が残せないのは無能。この公式からすれば、一体何をやっているのか判らないのが日本。こちらでは企業がサクラメールで世論を造るなど取るに足らない話だが、そんな幼稚なレベルもやり切る事ができない。

このような事を繰り返し、政治が何も動かせないツケは国民が払う。これがこれまでの日本流だとして、今の日本はこんな酔狂を繰り返している場合ではない。一方で再選に向けて継続的な21万人の雇用増という目標が定まったオバマ政権。彼らが何を作り出すか。仮に経済指標が創りモノであっても、ソレで株が上がり、結果的に雇用が増えれば仕事は完了する・・。






2011年7月7日木曜日

アメリカンフォーリー(American Folly)




今年の独立記念日は天候に恵まれ多くの米国人が花火を堪能できたという。まあ今の米国人にとって独立記念日は「花火の日」でしかなく、この国にとって独立が何だったか最早はどうでもいい話である。ではその米国からいつまでたっても独立しようとしない日本は、米国はどうやって独立したのかを敢えて知るべきだろう。

そもそも米国は独立戦争でイギリス軍を打ち負かしたのではない。職業軍人部隊のイギリス軍に対し初代大統領のジョージワシントンが率いた米軍は基本的に農民の反乱軍。そんなことは不可能である。客観的にみて米国の独立はフランスの協力なしにはありえなかった。それは記念日に再放送された第2代大統領のジョンアダムスの伝記でも米国人に示された。そこでは米国のグランドデザイナーのベンジャミンフランクリンが、フランスに駐在し、ジョンアダムスと協力しながらアメリカがイギリスから独立するためにフランスが協力する環境を整える様子が描かれている。ならば米国は独立記念日にはもう少しフランスに敬意を払ってもよいはずだ。

今の米国人が歴史に興味を示さず、フランスをはじめとする欧州を軽視する事に、逆にフランス人はどこかで米国を馬鹿にしているだろう。その典型が独立記念日のニューヨークタイム。特集は 「AMERICAN FOLLY」だったが、ストラスカーンの一件で更に若い知識階級のフランス人はこの思いが強くなっているらしい。「アメリカンフォーリー」とはその言葉の通り米国の愚かさと言う意味。フランスからすれば、トランスフォーマーのような映画しかつくれない今の米国の風潮が、拙速なストラスカーンの逮捕につながったと考えているようだった。その意味ではここにて欧州流の協調に水を差す米国の格付け機関の行動も「目立ちたがり屋」以外の何物でもない。(ギリシャ国債の扱いにおけるS&P)

恐らく、このような事が重なって金融危機後の協調は崩れていく。相場はその時が楽しみだが、次に共和党から大統領が出たらその可能性が一気に高まる。一方米国ではその前に今週米国債上限で山場が来る。ならばこの国が小世界たる事の意味をしらず、イメージだけで米国債を抱えてきた日本の投資家は今こそ米国憲法修正条項第14条の4番を勉強した方がいいだろう。過激な共和党の中にはこの時代にこんな話を持ち出す輩がいるのだ。

そして最後に最も重要な事を一つ。今は国家の借金として国債と成長率ばかりが取り上げられる。だがそれは格付け機関のまやかし。厳密には「国家の借金=国債発行残高」ではない。それが冒頭の資料。それをみると今こ国の借金は14兆ドルではなく60兆ドル前後になるだろう。小世界のアメリカは独立後、偉大な建国の父の威光もあり、徐々に地球と言う大世界をその傘下に従えた。その構造がこの借金を誰かに肩代わりさせているにすぎないのである。

(資料は2007年の)

(米国憲法修正条項第14条4章)

Section 4. The validity of the public debt of the United States, authorized by law, including debts incurred for payment of pensions and bounties for services in suppressing insurrection or rebellion, shall not be questioned. But neither the United States nor any State shall assume or pay any debt or obligation incurred in aid of insurrection or rebellion against the United States, or any claim for the loss or emancipation of any slave; but all such debts, obligations and claims shall be held illegal and void.





2011年7月6日水曜日

49対25の衝撃 破産を好む米国人

ギリシャの話が先週で一旦終わり、今週米国では米国債の発行枠を巡る政治が佳境を迎える。ソレを控え先週CNBCが伝えた調査結果は衝撃だった。CNBCは発行枠が引き上がらずこのまま米国がデフォルトになるのと、枠が引き上がり、結果として国の財政悪化が進むのとどちらが悪いかを一般の米国人に聞きとり調査をした。

結果は49%が共和党の主張する「財政悪化がより悪」だという意見に賛同。25%だけが政権が警告する「市場の大混乱を悪」とした。この結果は衝撃。(参考WEB)。つまり米国民は、選択を迫られればデフォルトを選ぶという事だ。これは政権のスタンスではないが、共和党にゲームのエッジを渡しかねない重大な結果である。

さすが米国はノンリコースや戦略的破産がスキルとして横行する国。これまで日本の金融機関が「そうはいっても」との感覚で日本人の貯金を米国債に振り向けている危険性を何度も警告してきた。それを、FAITH VALUE RISKとしてここでも紹介したが、せめてこのブログの読者だけでも、普通の米国人のこの感覚が意味するところは知っていてほしい。

ただこれまでの米国には国内に横行する徳政令を覆う成長があった。健全な米国債市場はその最後の砦だった。ところが今は成長も国債頼みの本末転倒が続く。だからFEDが買っている。こうなると本質はポンジーの末期症状。それを相対評価の格付けの愚かさと、日本や中国の行き場のない金が米国債の本質を隠してきた。そしてこの本質を隠すために、しばし日本の債務の大きさと成長率の弱さが持ち出された。(その事実はあるが)

だが日本人には借金を返す意思と、常に世界が欲しがるモノを作る魂が残っている。一方消費経済の米国では、アップル等の例外を除けば「反省だけでは明るい未来はない・・」というレーガン主義があるだけではないか。

ところでCNBCはなぜこんな危ない調査結果を紹介したのか。メデイアとしてのジャーナリズムの観点か或いはゲーム化した金融の旗振役としてボラを煽りたいのか。次の政権が共和党だと見切るのはまだ早い。いずれにしても自分がCNBCを観るヘッジファンドならこう考える。

「ならば米国債のデフォルトで儲けられないか?」ヘッジファンドに国家の威信は関係ない。彼らにとっては儲ける事がすべてだ。つまりオバマ政権の警告する市場の大混乱は、実はボラティリティ低下に悩む彼らには絶好のチャンスかもしれないのだ。

いずれにしても、共和党新聞などからは、これまで世界を繁栄に導くために米国が流した血の代償として、次は世界が多少米国の為に犠牲になるのは当然との感覚も感じられる・・。

(参考CNBC 統計)

http://www.cnbc.com/id/43564548


2011年7月2日土曜日

BIG BOY




夏のトマト栽培に挑戦して10年。ある事を発見した。日本の品種は脇芽を取れば素直に一本立ちになるが、こちらの品種は途中からどれが脇芽なのか判らなくなる品種が多い。多くは一段目の花が咲き、2段目と3段目の花が咲くころに等分に分かれてしまう。そしてそのままにしておくと花の数が多すぎ、栄養が果実にいかなくなる。どうやら旨さを追求して改良を繰り返すうち日本のトマトは日本人そのものに似てきたようだ・・。

そういえば、金融危機以降は、民主主義の形態を維持する国は、経済の衰退を迎えると右に行くか左に行くかの選択を迫られるとしてきた。その事例としてワイマール共和国を何度もとりあげた。今日のNYTの一面は体制を批判する若者のデモ行進の写真だったが、ギリシャかと思いきや英国の話だった。ワイマール憲法は優秀なドイツ人が知恵を絞って作りだした民主主義の最高傑作。ところが経済が疲弊するとドイツ人でさえヒトラーを支持するか、そうでなければ共産主義者になるかだった。やはり国が理想的にまっすぐに伸びるのは難しい。ならばギリシャでも英国でも、そしてもう少し先ではこの米国も、AUSTERITY (耐貧生活)を強制する政権に対し、政権を牛耳る金融や資本家に対し、右か左かで若い世代が暴動を起こすのは既定路線である。

そんな中で日本はまだまだ真っすぐ。若者が草食化し先進国で初めてデフレ対応国家に進化し、その上に震災まで加わった。これからは節電が美徳である。そして中国も分かれないだろう。今の共産党の支配は壊れるかもしれないが、中途半端に民主主義を導入しない覚悟があればこの国も分かれない。

まあ何が強い国で何が個人の幸せか、通り一辺倒に、民主主義だ、資本主義だと言っているのは人類が地球上の生き物として成長していない証拠。 土いじりはそれを教えてくれる・・。

(写真は米国の代表的なトマトの品種 BIG BOY)





2011年7月1日金曜日

俺の空



ヘッジファンドのオーナーの超豪邸が集まるロングアイランドのハンプトン地区。そこのATMマシーンで誰かが誰かのレシートを拾ったらしい。そしてソレをネットに投降した。レシートは、誰かが400ドルを下ろした事と手数料として2.5ドルかかった記録が残されていた。だがこれではニュースではない。実はこのレシートの持ち主は、金利が付かない個人用当座預金に100ミリオンダラーを入れていたのだ・・。


この話を聞いて思いだしたのは、70年代に密かに読んでいた本宮ひろ志の「俺の空」。そこでは旅をする主人公の安田財閥御曹司の一平が、どこでどれだけ金を使っても直ぐ彼の口座に常時100億円が補充されるシーンがあった。米国でも当座預金はそんな使い方であり資産管理の口座ではない・・。

ではこのレシートは誰が落としたのか。ネットでは持ち主はあのデービッドテッパーであるとし、CNBCもそのまま使っていた。CNBCは午後のコーナーで「彼らに課税せよ」との昨日のオバマのスピーチに則した意見を取り上げた。

そういえばテッパー氏の顔には同業のポールソン氏の様な険しささはない。どこか愛きょうがあり、彼ならレシートを落としても不思議はない。だが本人は「リーマン危機以後、一度もATMには触っていない。」と、これはこれで興味深いジョークを飛ばしていた・・。  いずれにしても、彼らには「俺の空」が続いている・・。